開始

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綾崎加奈が指差した所には、黒澤奈緒美が棚から持ち出してきた品々が並べられていた、霧島と綾崎側から見て左側から説明すると… まずは…一枚のローブが広げられている、縁取りは素晴らしく手間をかけられた事が分かる銀糸の装飾が施されている、単純にローブとして見た限りでは非常に良い魔術品だと言うのは間違いない、最近、心霊スポット探索の最中に「魔」と化した悪霊に襲われたのをきっかけに、ある程度の霊視力に目覚めた綾崎加奈の目にも、強いオーラの輝きが見えていた…だが、問題はそのローブの色、毒々しいばかりの「紅」色だった、妙にテカテカとした艶もあり、目立つには目立つのだが、いざ着るとなると抵抗がある。 そして真ん中には「六芒星の飾りが付いた杖」これはまあ…普通であろう、オカルト研究部と言う部活の内容からして、勧誘員たる部員が手にしていても、それらしい雰囲気を与えてくれるアイテムとして十分役立つ物に思える。 だが、霧島が固まって目を点にしながら見つめている「物」、そして綾崎が指を差して拒否した「物」…それは… 『「山羊の頭の被り物」なんてあり得ない!』 綾崎加奈が指差したままで、黒澤奈緒美にそう言った「物」とは、なんと首から上を切り落として剥製にされた、山羊の頭の被り物であった。 未だに生きているかのような山羊の瞳には、ちょうど正面に居る綾崎を映している…ともあれ、机に並べられた三点の品物の中でも、山羊の被り物はひときわ異彩を放っていた…
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