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大学卒業
就職して銀行員
大手銀行は選ばずに地域の銀行員になった
3年地道に努力しながら働いた
そして今年
転勤が決まった
転勤先は陸の孤島と呼ばれている田舎町だった
腰から砕け落ち座り込んでしまった
涙が流れるのを堪えた
俺の働きってこんなモンだったんスかね
先輩に慰めの声をかけられた
多分違うよ
まだ若いから誰を行かせようと考えた時
たまたま名前が挙がっただけだよ
渋々転勤先に移動
不景気だから再就職が今より良い職場だとは限らない
俺は辞めずに安定性を選んだ
魚は美味い
地域の人は漁師が多くて口は悪いけれど誰もが優しくて暖かい
1軒しか無い居酒屋で呑んでいる時
漁師からちゃんと呑んでるのかと声を掛けられ背中をドンドンと叩かれた
最初は顔や素振り態度を見て怖い人だと思った
俺はちゃんと呑んでますよと答えた
漁師はそうかちゃんと呑んでるかと笑顔で答えた
その後
でも具合悪くなるまで呑み過ぎるなよと声を掛けてくれた
何気に優しい漁師を見て始めは怖い人だと思ったが少し内面を知ると好感が持てた
市場の競りを見に行きたいと言った時
明日来いと言ってくれた
次の日
職場の同僚と一緒に見に行った
銀行の取引先の人が居た
声を掛けられ行ってみると水槽の中から生きている鮭を1本まんま渡された
鮭弁に入っている鮭とは違いの分かる美味い鮭
一人暮らしでは食べられない量
実家に送った
2年後
俺はこの地域が好きだ
一生とは言えないけれど後5年は居たいと思っていた
今年
住んでみれば都だったこの地域からも転勤が決まった
次に向かったのは今より少し開けている田舎町
もう近くに海は無い
転勤から今日で1週間が過ぎた
いつもと変わらずに銀行の業務をしている
新しい人間関係
今は良い場所かどうかなんて分からない
次は地元に戻って働きたいと考えている
2012年4月3日
岩光敏生
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