2012年4月

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大学卒業 就職して銀行員 大手銀行は選ばずに地域の銀行員になった 3年地道に努力しながら働いた そして今年 転勤が決まった 転勤先は陸の孤島と呼ばれている田舎町だった 腰から砕け落ち座り込んでしまった 涙が流れるのを堪えた 俺の働きってこんなモンだったんスかね 先輩に慰めの声をかけられた 多分違うよ まだ若いから誰を行かせようと考えた時 たまたま名前が挙がっただけだよ 渋々転勤先に移動 不景気だから再就職が今より良い職場だとは限らない 俺は辞めずに安定性を選んだ 魚は美味い 地域の人は漁師が多くて口は悪いけれど誰もが優しくて暖かい 1軒しか無い居酒屋で呑んでいる時 漁師からちゃんと呑んでるのかと声を掛けられ背中をドンドンと叩かれた 最初は顔や素振り態度を見て怖い人だと思った 俺はちゃんと呑んでますよと答えた 漁師はそうかちゃんと呑んでるかと笑顔で答えた その後 でも具合悪くなるまで呑み過ぎるなよと声を掛けてくれた 何気に優しい漁師を見て始めは怖い人だと思ったが少し内面を知ると好感が持てた 市場の競りを見に行きたいと言った時 明日来いと言ってくれた 次の日 職場の同僚と一緒に見に行った 銀行の取引先の人が居た 声を掛けられ行ってみると水槽の中から生きている鮭を1本まんま渡された 鮭弁に入っている鮭とは違いの分かる美味い鮭 一人暮らしでは食べられない量 実家に送った 2年後 俺はこの地域が好きだ 一生とは言えないけれど後5年は居たいと思っていた 今年 住んでみれば都だったこの地域からも転勤が決まった 次に向かったのは今より少し開けている田舎町 もう近くに海は無い 転勤から今日で1週間が過ぎた いつもと変わらずに銀行の業務をしている 新しい人間関係 今は良い場所かどうかなんて分からない 次は地元に戻って働きたいと考えている   2012年4月3日        岩光敏生
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