第三章

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『まもなく着陸いたします。』 女性の綺麗な声のアナウンスが耳に届き、ぱちりと目を開いた。 どうやらもうカナダに着いたようだ。 つまり… 交流会は始まってしまったのだ。 自然と口元が歪む。 「……おい。」 ちょうどその時、後ろからポンと手がおかれた。 振り返らずとも声だけでわかる。 「なんのようだ、滝ケ崎?」 ニヤリと笑みを張り付けながら振り返ってみせると、案の定、そこには滝ケ崎が俺の肩を掴んでいた。 用件なんざ、聞かなくても分かるのに敢えてそれを聞こうとする俺は、相当性格が捻くれている。 「………っ…。」 「…用がねーんなら、先に行くぜ?」 「待てっ!」 言いづらそうに口を紡ぐ滝ケ崎に、先に行こうとするふりをすれば、大きな声で呼び止められた。
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