第三章

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「俺には仕事があんだよ。」 そういって、慎介の返事も聞かず、ホテルとは別方向へと足を進める。 ホントは仕事なんかない。ただ、今は慎介と一緒にいたくなかった。 キラキラと、世の中の汚いものなんか知らないような、純粋な目。 太陽のように明るくて、温かい笑顔。 楽しい時にはひたすら楽しそうに。 悲しい時には涙を流して。 からだ全体をつかって、あいつは人生は楽しいのだと訴えてくる。 それは俺には決してできないことで、 「……ホント、うらやましい。」 「何が?」 「ん?だから、慎介が………って、は?」 いやいや、おかしいだろ。 俺、一人で歩いてたのになんで返事がくるんだよ? 恐る恐る後ろを振り返れば 「……なんでてめぇ、着いてきてんだよ。」 「だって、一人で迷子とか悲しいじゃん? てかさ、俺がうらやましいってどういうことだ?」 瓶底眼鏡で見えないが、きっとキョトンとした顔をしているのだろう。 首を傾げながら慎介は俺を見つめていた。
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