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「俺には仕事があんだよ。」
そういって、慎介の返事も聞かず、ホテルとは別方向へと足を進める。
ホントは仕事なんかない。ただ、今は慎介と一緒にいたくなかった。
キラキラと、世の中の汚いものなんか知らないような、純粋な目。
太陽のように明るくて、温かい笑顔。
楽しい時にはひたすら楽しそうに。
悲しい時には涙を流して。
からだ全体をつかって、あいつは人生は楽しいのだと訴えてくる。
それは俺には決してできないことで、
「……ホント、うらやましい。」
「何が?」
「ん?だから、慎介が………って、は?」
いやいや、おかしいだろ。
俺、一人で歩いてたのになんで返事がくるんだよ?
恐る恐る後ろを振り返れば
「……なんでてめぇ、着いてきてんだよ。」
「だって、一人で迷子とか悲しいじゃん?
てかさ、俺がうらやましいってどういうことだ?」
瓶底眼鏡で見えないが、きっとキョトンとした顔をしているのだろう。
首を傾げながら慎介は俺を見つめていた。
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