第三章

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そんな慎介が、少しだけ過去の人物と重なって、密かに唇を噛み締めた。 ――もう、同じ過ちを犯してはならない。 そう思うのに……… 「一人で背負い込んでんじゃねーよ。」 どうして、体は言うことを聞いてくれないんだ。 「てめぇは馬鹿みたいに笑って、馬鹿みたいに泣いて馬鹿みたいにはしゃいでんのが似合ってんだよ。」 ぽんぽんと俺よりも低い位置にある慎介の頭を叩く。 「偽る必要なんざねぇ。お前は他の誰でもねぇ、慎介なんだ。だったら慎介らしく生きればいいだろーが。」 純粋無垢じゃなくたって、きっとこいつならあいつらをいい方向へと変えてくれる。 だって、こいつがあいつらの太陽だということに、変わりはないのだから。 なんでこいつが弟の真似をしているのかなんざ知ろうとも思わねー。 だけど…… 「お前はお前自身を貫きとおせばいいんじゃねーの?」 どんなに他人の真似をしたって、そいつになることなんか不可能なんだから。 そういったとたん、慎介は俺の胸に顔を押し付け子供のように泣きじゃくった。 「……っぉ、れ、慎吾じゃなくて、いーの?」 慎吾が誰かは知らないが、きっと弟の名前だろう。 「ああ、お前は“慎介”だ。」 俺がそう言うと、慎介は泣きながらも嬉しそうに笑った。 その笑顔はやっぱり--太陽みたいに、綺麗だった。
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