第三章

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少しだけ昔のことを思い出したら、無性にあいつに会いたくなった。 ポケットから再び携帯を取り出して、電話帳からそいつの名前を探して通話ボタンを押した。 でも―― ワンコールだけ鳴らして、やっぱり止めた。 あいつに甘えているばかりじゃ、前に進めないから。 真っ暗になった携帯のディスプレイは俺の、今にも泣いてしまいそうなみっともない顔をくっきりと映していた。 ――情けねぇな。なんて、自嘲の笑みを零して、でも、どこか縋るように、携帯のディスプレイを見る。 そんな時だった。 真っ黒なディスプレイが一気に光を放ったのは。 そこに表示された名前を見て、俺は躊躇うこともせずに通話ボタンを押した。 『もしもし?彪流、どうかしたんですか?』 相変わらず、柔らかいその声音に、思わず泣きそうになる。 『……彪流?』 「なんでもねぇ。間違って電話かけちまったんだ。」 『……嘘つき。なんでもないことはないでしょう?だって、今の貴方、泣きそうな顔してるじゃないですか。』 「は?何言って、」 『右、見て下さい。』 相手の言葉に勢いよく右を見れば、そこには 「……なんで。」 今現在通話中の秋夜がそこに立っていた。
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