俺と妹と第三者の、第七回頭脳大戦~グラタン物語~

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 父親との記憶を思い出す。子供っぽい人だった。信用出来る友達のようで、頼りになる兄貴ようで、尊敬出来る人で、凄いと思える父親だった。出世が同期の中じゃ一番速いと子供のように自慢してたりもした。小さかった俺はよく分からずも尊敬していた。  母親に内緒でサプライズパーティーの準備をしたり、母親に内緒で悪い事したり。 『あなた達、兄弟みたい』  母親はよくそう言った。どんなに仕事が忙しくても、休日は俺や母親と遊びに行ったするような、凄い人だった。愚痴は殆ど溢さなかった。唯一、我儘を言ったのがあのランボルギーニ・ディアブロを買う時だ。三日三晩拝み倒し、ローンで買うことを母親に納得させた。 「父親が死んだのは、俺が八歳の頃でさ、死ぬって事がよくわかんなかったし、父親がいなくなるなんて考えもしなかった」  もはやそれは、俺の一人言だった。殆ど関係ない事すら喋ってる。それでも、春香は静かに聞いてくれていた。 「それで苛められたりもしたし、それで泣きたくなる事もあった。だけどな、父親が死に際に言ったんだよ。家族を、頼むってさ。そん時、俺って小学三年生だぜ? 出来る訳ねぇのにさ。分かった、って言っちゃったんだよ。だから、家では気丈な振りしてた。母親は疲れてたから、一通り俺が家事やってた」  父親の最後は、今でも鮮明に思い出せてしまう。事故で、トラックに車ごと轢かれて色んなとこがぐちゃぐちゃだった。  それでも、父親は俺達が駆け付けるまで生きてた。母親に何と言ったかは聞こえなかった。そして、父親が俺に手招きをしていたので近寄った。
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