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――彰彦、お前に家を任せる。あと、車もお前にやる。お父さん、ちょっと遠いとこ行くからさ。
――どこ行くの? 僕も行くよ!?
――駄目だ、お前は母さんを守ってやってくれ。
――いや、お父さん。僕も連れてってよ
――いいか、彰彦。立派じゃなくていい。偉くなくていい。だけど、家族は守るんだ。
――お父さんは? お父さんはどうするの?
――お父さんか? お父さんは、大丈夫だ。だから、約束、してくれ……。
――わ、分かっ、た。
――頼むぞ、彰彦。
――……お父さん? お父さん!?
バタバタした医者達。緊迫した雰囲気。情けなく俺は泣き出していた。
あの頃は、何もかもが憎かった。
偶然父親がその日は乗っていかなかったせいで綺麗なままのランボルギーニが憎かった。父親がいないことでからかってくる子供達が憎かった。疲れてるから、と何もしなくなった母親も憎かった。
それでも、学校へ行き、喧嘩して、家事をする。そんかルーチンワークの繰り返しだった。
桜が散り、蝉が死に、枯れ葉が落ち、雪が溶けて、それを二回繰り返して、新しい父さんが出来た。
その頃には母親も落ち着き、働いていた。そして、母親が職場で知り合ったというのが、その新しい父さんだった。
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