俺と妹と第三者の、第七回頭脳大戦~グラタン物語~

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 俺は寝惚け眼で茫然と天井を見つめていた。窓の外からは小鳥の鳴き声。爽やかな朝だ。しかし、掛け布団のせいで僅かに汗をかき、寝苦しかった。肌にぺったりとくっつく服は不快感しかない。  上半身を起こすと、かけてあった布団がばさりと落ちる。夏も近く、掛け布団があると寝苦しいのだが、それでも妹が掛け直してくれたであろう布団を無下にする事は出来ない。  俺は寝相が悪くない。しかし、暑いと掛け布団を蹴っ飛ばす癖がある。父は部屋にはこない。母親は昨日から帰ってきてない。よってこの暑い時期に俺に布団がかけてあると言うことは、妹が掛けてくれたに違いない。  あぁ、妹。可愛い可愛い妹よ。お前が僕の為にやってくれた事だ。この不快感も心地よいものに思えてくるよ。  しかし、一度寝惚けてたとはいえ掛け布団をぶっ飛ばしてしまった。自分で布団を掛けても意味がない。  しょうがないので起きる。昨日は友人宅で遅くまで遊んでいたので、身体が少しだるい。普段は休みだったら昼過ぎまで寝てるのだが、起きたものは仕方ない。  寝癖が付いた髪の毛を掻きながらドアを開け、階段をゆっくりと降りる。毎回思うのだが、階段というのはどうしてこんなに音が響くのだろうか。  下につき、リビングへと続くドアに手をかけると、声が聞こえた。  鈴の音のような声。風鈴よりも、ホトトギスの囀りよりも美しい、我が妹の声だ。 「はい……分かった。じゃあ、また明日」  ガチャリと俺がドアを開けるのと、妹が振り向くのは一緒だった。  妹は変わらず美しかった。いや、俺は例え妹の顔や髪や鼻や目や口が全て潰れても美しいと思える。断言するね!  普段はポニーテールにしている艶やかな黒髪を腰までストレートにしている。眼福眼福。普段の静もいいけど、たまに見るストレートやツインテールはまた違った美しさがある。  しかし、ちょっと待って欲しい。中学生ならまだそこそこいるのだが、高校生になると大抵の女性はポニーテールを止めてしまう。面倒やら、化粧と合わないやら、私と合わないやらほざき、ポニーテールを止めてしまう。これは実に悲しい。ポニーテールが似合うのは確かに一握りで、確かに髪を一纏めにしてそのままにするのは面倒だ、が。それでもそれらのデメリットを覆す程のメリットがあるのだ。ポニーテール万歳、ポニーテール最高、神様が創ったのは妹とポニーテールだけに違いない。
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