俺と妹と第三者の、第七回頭脳大戦~グラタン物語~

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「――ごめん、じゃあね。うん、あそこで」  妹は家電話のプッシュボタンの上に置いていた輝かしい指を受話器に持っていき、かちゃりと元に戻した。どうでもいいけど、機械音痴だからといって携帯電話もあまり使えないのはどうかと思うぞ。 「だれ? 彼氏?」  疑惑の眼差しに妹はあはは、と苦笑する。うぅむ。もしかして今までの六人との彼氏と別れさせた事を警戒しているのだろうか。そしたらお兄ちゃんショック!! カルチャーショックみたいな感じでいいなこれ。口癖にしよう。 「違うよ。友達」 「そっかそっか」  一安心した俺は豆を挽き、蒸留して珈琲を飲む。うむ、この苦味が何とも言えぬ。何とも言えぬってなんやねん。言っとるやん。  カフェインのおかげで冴えてきた頭。ついでに煙草に火を着け紫煙を吐き出す。しかし、煙草は最初の一口が重要で、正直後のやつは蛇足。怠惰で吸ってるのだ。  いや、不味いし嫌いなんだけどね。  ニコチンとカフェインが頭の中で程よく混ざり合い、眠気をぶっ飛ばした。 「あき兄さん、これ、朝ご飯だから、早く食べちゃってね」 「どっか行くの?」 「コンビニ。ちょっと遅くなるかもだから」  俺が珈琲と煙草の準備をしていた間に、温め直してくれた朝ご飯。妹が頑張ってくれたと思うと、例えゴミでも食えるね!  静は服を変えていた。裾を畳んだジーパンとボタンダウン。ネクタイ付き。何を着ても静は似合う。が、ちょっとそのメンズが入ってる格好はどうなのだろう。  まぁいいか。流石に服装について説教するほど若くないし老けてない。  煙草の火を消し、いただきます、と礼を言いながら妹が作ってくれたトマトグラタンを頬張る。  そして、元気な掛け声と共に、汚れた世界へ出ていく妹を見送る。  おぉう、これは! うむ、善きかな善きかな。トマトは薄く食べやすいようにスライスされ、噛むと程よい噛みごたえで瑞々しい果汁を出す。チーズはトロリとうまい引き立て役となっている。そう、チーズは何かとコラボする事によって本領を発揮するのだ。  しかし、猫舌の俺には熱かった。味など分からなくなってしまった。  一度スプーンを置く。熱い事は別として、静はいいお嫁さんになるなぁ。 「さて、と……」  これより、第七回妹の彼氏を選別するぞ大作戦~それで静に嫌われても構わない~を開始する!
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