2人が本棚に入れています
本棚に追加
ふぅ、やれやれ。静よ、詰めが甘いな。今までの六回に比べたら頭を使ったほうだろうが、それでも俺には及ばないのだよ。
思考している間に、程よい温かさになったトマトグラタンを一口。
うむ、少し口がヒリヒリするけど、それでも美味い。ヤバイぞこれは、中毒になりそうだ。
そして、珈琲を飲もうとして伸ばした手が止まる。
違和感。それも特大級の。なんだ、何かを、見落としている!?
『俺と静は、明日から三連休――』
先程の会議の一言。ここだ。違和感はここにある。
眉間に中指を置く。俺が考える時の癖だ。何故三連休に引っ掛かった? 三連休、さんれんきゅう、サンレンキュウ……。
答えを見つけ、俺は二階に向かい、服を着替え、顔を洗い、髪型をセットしている暇はないので帽子を被り、普段持ってるバックとグラタンを持って、外へ飛び出した。
『そうか! わざわざ三連休に遊びに行く必要はない。俺が大学に行ってる時にすればいいのだ! なのに明日行くと印象付けた! これはおかしい。大学行ってる時に行かないのは後でバレるからだ。三連休で、俺への対策だったらデート、休み、デートにすればいい! 昨日は確かに友人宅で遊んでいたから今日は出掛けないと妹は踏んだ! つまり、今までのがフェイク! 俺が自分で考えて待っているという状況を作り出したかのように錯覚させる、初歩的なミスディレクションとマジシャンズセレクトだ!』
迂闊だった。あと少しで大きな間違いを犯すところだった。
しかし、妹の為なら信念だろうが家の大黒柱だろうが曲げてやるわ!
「パパー。あの人はどうして難しい顔しながら、グラタンを食べて、高笑いをして全力疾走してるのー?」
「あれはね、曲がり角でツンデレで強がりで、でもルートに入ると自分には甘えたり弱味を見せてくれる転校生の女の子とぶつかってフラグを立てる為だよ」
ぜっんぜんちげぇよ! つか俺は大学生です! 俺の渾身の叫び声は、息切れのせいで放てなかった。
最初のコメントを投稿しよう!