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「きゃ!」
ところがどっこい、あの親子の予言は当たった。いや、別にツンデレで転校生で仲良くなる為ではない。けれど曲がり角でぶつかったのは事実だった。
俺はグラタンを食うのに夢中で、急に飛び出た俺に少女がぶつかってしまっただけだ。
強くぶつかったので、互いに尻餅をついた。サンドバッグが落ちたような音が二つ。
妹の愛情がたっぷり詰まった(俺の想像)トマトグラタンは無惨にも蟻の餌となった。
しかし、前方不注意は俺のせいだ。致し方なし。あぁ無情。世の中、盛者必衰。沈まぬモノはなし。
「すまん。大丈夫か……って春香? 何してんだ?」
「あれ、お兄さん。何でここに? ……って言うか、酷いですよ。いきなりぶつかってくるなんて」
(妹程ではないが)可愛らしい顔立ちをしている少女。いや、少女と言っても妹よりは発育がいい。まあ、俺の好みは妹が大前提だけど。しかし、どこかぼんやりとした雰囲気は危なっかしくて放っとけない感じがある。
例の金で妹の動向を探って貰っていた妹の友人だ。鹿波春香(かなみはるか)。
「いや、本当にすまん。妹が彼氏とのデートっぽかったから急いでたんだ」
さっさと立ち上がり、手を差し伸べる。ドモッス、と軽い感じで手を取り、立ち上がる春香。
「そだ。妹がどこ行ったか聞いてないか? グラタン食い終わったら聞こうと思ってたんだが」
「それまでどこ行こうとしてたんすか……」
呆れられた。いやまぁ、確かに急いでばっかでどこ行くかとは決めてなかった俺が悪い。しかも衝突事故を起こしてしまった。
「まぁ、静は最近出来た遊園地に行くらしいっすよ……」
「……あぁ、あそこか!」
彼女と付き合ってた時に一度行ったが、待ち時間が長すぎる。その時の彼女に『ごめん、そろそろ妹が俺の為に使った(妄想)ご飯の時間だから帰るわ』と言ったら頬をぶたれた記憶は新しい。
ていうか、遊園地ィィイイ!?
俺だって静と行ってないのに! 彼氏、許すまじ!
「サンキュー! これ、いつものだ!」
バックから封筒を取りだし、春香に渡す。妹の為ならいくらでも使ってくれるわ! バイト禁止にしてる変わりに、必要になったら俺が渡している。
「あっ、お兄さん。ストップっす」
ぐえぇ!
走り去ろうとした俺の襟首に逆ベクトルがかかり、結果的に蛙の断末魔のような声が出た。いや、蛙の断末魔なんて聞いた事ないけど。イメージ的に。
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