俺と妹と第三者の、第七回頭脳大戦~グラタン物語~

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 車好きの男なら誰でも一度は憧れる、ランボルギーニ・ディアブロ。外は美しい流線を描き、中は機能美に満ちている。総製造台数二千九百しかないという、素晴らしきスーパーカー。車が大好きだった父が俺にくれた物。借金して、貧乏生活だった頃が懐かしい。 「あの……これってどうやって開けるんですか?」 「ナサインテーク……あぁ、黒いとこに銀色のボタンあるからそれ押して。そしたら勝手に開く」  初々しいなぁ。俺も最初は「えっ、なにこれ。開かねぇじゃん」とかやってたものだ。  二人乗りのスーパーカーなので、俺と春香が乗れば埋まる。静と乗ったら「もう二度と乗らない!」とか言われたもんだ。沁々しくしく。  ドライブ用シューズと手袋を嵌め、エンジンをつける。腹の底から響くような重低音。うむ、素晴らしい。 「あの……怖いですけど」 「大丈夫だ。すぐ慣れる」  エンジンを吹かし、調子を確かめる。問題なし。隣の春香がシートベルトを締めたのを確認。大丈夫だ。  行くぜ!  車庫を飛び出て、狭い一方通路を走る。  疾走感と躍動感溢れる車で、事故らないようにいつもよりゆっくり目で走り抜けた。
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