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向こう岸からギッコラオッコラと麗次郎が漕ぐ船が見えてきた。
客はどうやら、花ノ絵町の殿方の様だ。
殿方が麗次郎にブツクサと漏らす。
「ウヌは最近の巷での噂知ってるのだろ?この河にも出没する妖がおるらしいが、大丈夫であろうな?」
心配する殿方に、麗次郎がとびきりの笑みを浮かべて言葉を返す。
「まぁまぁ…そう心配なさらないで!もしもの時は私がどうにか致します故。」
殿方は顔を悲痛に歪ませながら、黙り込んだ。
「…………。」
暫く進んで行くと、河底に何やら影が現れ、船に沿って着いてくる。
殿方は未だ気付いてはいないが、影に気づいた麗次郎は目線をそこへ運んだ。
すると、河底から球体状の物が顔を覗かせた。
次の瞬間、河から勢いよくそれは飛び出した…。
ザバッ。
「っ!?」
頭に皿状の物がありおかっぱで、手足に水掻き、口元は大きな嘴姿のそれはまさしく河童。
船が大きく揺れる。
グラグラ…。
異変を察した殿方が声を張り上げて叫ぶ。
「なっ…何じゃ?何が起きた?」
麗次郎は冷静に殿方に現状を伝える。
「すみません…仙田殿、妖が現れました。」
殿方が慌てふためきながら叫ぶ。
「なっ…なっ…何じゃとっ!?であえであえいっ!!」
しかし、殿方の雇った武士の者は腰を抜か
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