第三章 疑─九尾狐

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銀次郎は刀を片手で持ち、韻を切り始めた。 すると、鎌鼬(窮奇)が現れ、白狐達を次々に斬りつけた。 ブシブシブシッ。 「鎌鼬…。」 半助は呆気にとられていた。 「俺は仲間を呼ぶことも出来るのさ。」 白狐達は直ぐに新たな韻を切る。 「先に厄介な白狐らを倒さなければ、九尾狐に手出しが出来ん。」 銀次郎もまた韻を切る。 白狐の韻が放たれた。 沢山の火の玉が飛んで来る。 ビュンビュンビュンッ。 銀次郎の韻も放たれ、白浪が白狐達と火の玉を飲み込んだ。 ザバンッ。 次に九尾狐が韻を切り始め、それに白狐も併せる。 すると、無数の炎(ほむら)の狐が四方八方に駆け抜けた。 シュンシュンシュンッ。 半助が炎に飲まれる。 ブワァッ。 直ぐに銀次郎が韻を切り、半助の体を冷やした。 「っ…。」 その為、半助は軽い火傷ですんだ。 しかし、銀次郎は半助を助ける為に、左足にかなりの火傷を負ってしまっていた。 「はっ!?銀次郎、酷い火傷を…。」 心配する半助に、銀次郎は痛みを堪えながらも必死に笑顔を見せる。 「心配するな、なくなってしまった訳ではないから治せるさ。」 そう言って、銀次郎は治癒の韻を切った。
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