第三章 疑─九尾狐

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狐共が韻を切り終え、業を放ってきた。 素早く銀次郎が守のマガタマを前に掲げる。 ゴゴゴゴ…。 ピキッ。 マガタマに亀裂が入った。 「くっ…頼む…持ち堪えてくれ!!!」 更にマガタマの皹が広がっていく。 「未だ…未だ砕けるなっ!!」 半助はすっかり腰を抜かして動けずにいる。 「あぁ…あわ…あわわわ…。」 ついに限界が来て、マガタマが粉ごなに砕け散った。 「くそっ、半助だけは連れて行かせる訳には…いかぬっ!!!」 そう言って、刀を両手で前に構えた。 刀が黄泉火を吸い込んで行く、が、追いつかずに、銀次郎の体を黄泉火が飲み込んで行った。 ゴォォォォッ…。 銀次郎から麗次郎に戻り、地面に横たわった。 黄泉火はそのまま地面に消えていった。 半助が麗次郎の側に、四ん這いで近づいて行く。 「麗次郎…生きてるのか?まさか死んだんじゃあるまい?なぁ…。」 半助の声に反応して指をピクリと動かす。 それを見て、半助はほんの少し安堵した表情を浮かべた。
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