第三章 疑─九尾狐

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挨拶を済ませた銀狼太は早々に犬神へ変わった。 「情けない銀に変わって、俺が相手をしてやるぜっ!!」 麗次郎は不機嫌そうに刀を握り、駆け出す。 半助も後に続いた。 銀狼太は自慢の爪で九尾狐の鼻をひっかく。 ズバッ。 麗次郎が遅れ気味に右前足を斬りつける。 半助も右前足を斬りつけ、直ぐ様その場から離れた。 九尾狐が体勢を崩し、麗次郎らを睨みつける。 銀狼太はゆっくり九尾狐に近寄って、右前足から小太刀を抜いた。 九尾狐が口を開く。 「約束ですから、道を開きましょう…。」 先に白い鳥居が現れる。 しかし、麗次郎は先には進まずに、来た方の鳥居へ向かって歩き出した。 「九尾狐…すまないね、友人を迎えに行こうと思っていたが、友人自ら出向いてくれた故、戻るとするよ!」 すると、銀狼太が呼び止めた。 「おいおい、ちょっと待てよ、里の奴らがお前に会いたがってんだ…折角だから寄ってけ!!」 それを聞いた麗次郎は、新しい鳥居の方へ向き直した。 「実はよぅ…俺も銀を迎えに行こうと思っていたんだ。」
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