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銀次郎の親父が退屈そうに話す。
「クソガキ、すっかり人間臭くなったんじゃねぇか?…出て行ってから一度も顔出さねぇで…。」
銀次郎はふてくされながら、親父の話を聞いていた。
半助が恐る恐る銀次郎に近寄って訪うた。
「…のぅ、銀次郎よぅ、父方は目が見えぬのか?」
銀次郎は無言で頷いた。
半助は更に訪う。
「何故目が見えぬのだ?」
銀次郎は小声で半助に言った。
「親父が目を失ったのは、今は亡き母の為だ。」
未々疑問は消えなかったが、半助は深くは訪わなかった。
目が見えぬ筈の銀次郎の親父が、半助の方へ向いて訪うて来た。
「よぅ人間!よくここまで来たな…その勇士を讃えて喰ろうてやる。」
半助は足早に後ろに退いて、尻餅をついた。
銀次郎の親父は馬鹿笑いしながら言う。
「冗談に決まっとろうが!!…久方ぶりに人間が里に来た故、ちと脅かしただけよっ!がはははは…。」
妖一同で暫し大笑いをした。
半助は気の抜けた表情で座り込み、銀次郎の顔を見ている。
銀次郎は手を差し述べながら言った。
「手を貸そう…すまぬな、皆でからこうて。」
半助はポカンとしながら、銀次郎の差し出した手を掴んだ。
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