第三章 疑─九尾狐

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鴉天狗と酒を酌み交す夜叉丸。 昔話に華が咲いた様に、ご機嫌な様子だ。 「がははははっ、あのクソガキもあんな大きくなりやがってなぁ、ガキの頃は素っ裸でそこらを走り回ってよ…ブツクサブツクサ。」 銀次郎は一瞬笛を吹く手を止め、横目でチラリと夜叉丸を睨み、また笛を吹く。 上機嫌の夜叉丸が半助を大声で呼んだ。 「おぉ~い半助とやら、一緒に呑まぬか?銀次郎のガキの頃の面白い話を聞かせてやるからよっ!!」 銀次郎は慌てて夜叉丸の口を塞ぎに行った。 そこから親子喧嘩が始まり、夜叉丸の拳が振り上がった。 ゴツンッ。 銀次郎の頭に勢いよくゲンコツが下りて、銀次郎は頭を両手で抱え、その場にしゃがみ込んだ。 眼には涙がうっすらと滲んで居る様だった。 「っ…………。」 半助はソロソロと銀次郎に近寄って声を掛けた。 「銀次郎、大丈夫か?」 そこへ銀狼太が来て言う。 「面白いだろ?半助、鬼が鬼に叱られてる様はそう見れるもんじゃねぇ、しかと頭に焼き付けとけよ!!」 銀次郎と夜叉丸の鋭い視線が、銀狼太に向いた。
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