15人が本棚に入れています
本棚に追加
夜叉丸は重々しく話し、表情は沈んだ。
「幼い銀次郎の上から、熱い湯の入った茶碗が落ち、椿は銀次郎をかばって、代わりに左目周辺に重度の火傷を負ってしまってな…。」
半助は頷きながら漏らす。
「そんなことが…。」
夜叉丸の話は未だ続いた。
「儂に醜い顔を見せたくなかったのだろう…泣き叫びながら、儂の目を小太刀で刺し、光、色、形を奪った…だが、儂は椿の思いをわかっていた故、何もなかった様に過ごした。」
半助は涙を堪えきれずに、いつの間にか静に泣いていた。
「それで目を…ヒグッ。」
半助が泣いて居ると、墓参りより帰った銀次郎が、半助の顔を覗きながら声を掛けた。
「何故半助は泣いて居る?…まさか、俺が居らんかったことを…」
銀狼太がすかさず言った。
「違うってぇの!!」
夜叉丸は半助の涙の理由を話した。
「お前のガキの頃の話をしたのよ、俺が目をなくした理由もな…。」
それを聞いた銀次郎は、半助の肩に手を優しく掛け、穏やかな表情を浮かばせながら言った。
「優しいやつだな…半助は。」
最初のコメントを投稿しよう!