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半助は照れを隠そうと、うつ向いた。
銀次郎が二、三歩進んでから言う。
「お前ら、そろそろ行くぞ…。」
二人は静について行った。
帰りの道には来た時の鳥居はなく、ただ、細い畦道が続いているだけだった。
「鳥居がなくなって居るぞ?」
半助が言葉を漏らす。
麗次郎は真顔で言った。
「…本来の鳥居のあるべき場所へ戻ったのだろう。」
半助は不思議そうな顔をしていた。
一歩と歩み出したその時、鴉天狗がやって来て、麗次郎の手へ何かを置いた。
「すまぬすまぬ、すっかり忘れていたわ。」
そう言って鴉天狗が渡したのは、守のマガタマと小さな簪だった。
「これは?」
麗次郎が訪うた。
鴉天狗は考える様な表情をしながら言った。
「夜叉丸が出発前に持たせてやれと渡したものだ!!一つは見たままだが、もう一つは若の母君様の形見だそうだ。」
それを聞いた麗次郎は、大事そうにしながら簪を懐へ偲ばせた。
「ありがとうございました爾郎弦、父にも宜しく伝えといて下さい。」
「うぬ、引き受けた!道中気をつけてな、また遊びに来いよ!!」
そう言って、鴉天狗の爾郎弦は里の方へと飛び去って行った。
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