第三章 疑─九尾狐

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半助は照れを隠そうと、うつ向いた。 銀次郎が二、三歩進んでから言う。 「お前ら、そろそろ行くぞ…。」 二人は静について行った。   帰りの道には来た時の鳥居はなく、ただ、細い畦道が続いているだけだった。 「鳥居がなくなって居るぞ?」 半助が言葉を漏らす。 麗次郎は真顔で言った。 「…本来の鳥居のあるべき場所へ戻ったのだろう。」 半助は不思議そうな顔をしていた。 一歩と歩み出したその時、鴉天狗がやって来て、麗次郎の手へ何かを置いた。 「すまぬすまぬ、すっかり忘れていたわ。」 そう言って鴉天狗が渡したのは、守のマガタマと小さな簪だった。 「これは?」 麗次郎が訪うた。 鴉天狗は考える様な表情をしながら言った。 「夜叉丸が出発前に持たせてやれと渡したものだ!!一つは見たままだが、もう一つは若の母君様の形見だそうだ。」 それを聞いた麗次郎は、大事そうにしながら簪を懐へ偲ばせた。 「ありがとうございました爾郎弦、父にも宜しく伝えといて下さい。」 「うぬ、引き受けた!道中気をつけてな、また遊びに来いよ!!」 そう言って、鴉天狗の爾郎弦は里の方へと飛び去って行った。
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