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銀夜叉は笛を吹くのを止め、刀に手を添えながら話し出す。
「俺は少なくとも敵ではない、人間達に迷惑を掛ける者共を裁きに来ただけだ。」
半助は恐る恐る、銀夜叉に声を掛けた。
「あ…あの…その君が右肩に巻いている桃色の布切れは…まさか…。」
銀夜叉は布切れに目線をやる。
半助は言葉を続けた。
「まさか…君は…君は…………麗次郎なのかい?」
深津も思わず声を漏らす。
「!?なっ…まさか。」
銀夜叉はコクリと頷き応えた。
「…麗次郎にして麗次郎にあらず…我が名は銀鬼の銀次郎、一夜の古笛吹きだ。」
深津と半助の視線が銀次郎に集中する。
二人が銀次郎に気を取られている内に、鵺の姿は消えていた。
「っ!?…鵺が居らぬぞっ。」
次の瞬間、一番奥の部屋から高々と悲鳴が上がった。
奥の部屋では、仙田の妻と仙田が気の抜けた様に、泣き崩れていた。
見れば姫君と見受けられし娘が、鵺にくわえられ気を失っているではないか。
深津と銀次郎が一早く駆け付け、刀を抜き構えた。
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