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「陽が傾いてきた……」
おもむろに少女が頭上を仰ぎポツリと呟いた。
茜色の光がそんな少女の横顔を照らし出す。
「今日中には次の町に着けるって言ってたんだけどなあ」
照らし出された少女の表情には疲れが滲み出ていて、言葉にも覇気が感じられない。
『……言いたくはないんだけどさ』
実に言いにくそうに、少女の隣で浮いている透明の少年は慎重に口を開いた。 そんな少年の言葉に、少女は少年に目線だけを投げる。
少女の動きに合わせてロングヘアーの金髪はさららとなびく。鮮やかな青い瞳は不機嫌そうに細められていた。
それを見てしまった少年は、何度か口の中でもごもごさせると覚悟を決めたかのように言葉を繋げた。その際、つい癖で栗色の髪を掻いてしまう。
『もしかして俺達騙されたんじゃないかな、あの人に』
少女は反論しかけて眉を吊り上げたが、
「違うって言いたい所だけど……そうだと思う」
げっそりとした顔でがっくりと肩を落とした。
『仕方ないよ……コウ』
コウと呼ばれた少女は、うなだれたまま覇気のない声で返した。
「ありがとう、フウ」
『どういたしまして』
相当落ち込んでいるらしいコウを見遣ってから、フウと呼ばれた少年は前を見つめた。
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