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コウの優しい歌声と、フウの澄んだ口笛は溶け合うように調和していた。
二つの異なる音がひとつになって、誰もいない廃墟へと響いていく。
コウが歌い終わると、フウはタイミングを見計らって口笛を止めた。
「気持ちよかったなあ」
当初の乗り気ではなかった表情とは打って変わって、すっきりとした様子でコウは背伸びした。
一方、眉間にしわを寄せてフウは唸るように問い掛けた。
『今の歌詞を、あんな短時間で思いついたわけ?』
「そういうことになるわね」
そういえば、と今更ながらに気が付いたコウにフウは溜息混じりに肩を竦めた。
『そういうのを才能って言うんだよ?』
「才能なんかじゃないわよ」
それだけ言うとコウは立ち上がり、元々は噴水であったであろうその場所に登った。
「ねえ、フウ。何か吹いてよ。歌ってあげる」
先程の即興で自信がついたのか、コウは嬉しそうに噴水だったその上を危なげに回る。
彼女の踊るような動きに合わせて、金色の髪もついてくる。
『うん』
また、フウもどこか楽しそうに再び口笛を吹き始める。
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