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二人がいるのは深い森の中。木が空高くそびえ立ち頭上からの光は細々としか差し込んでこない。
とても静かで、コウとフウ以外に人どころか動物の気配さえ感じない。実際に、しばらく歩いていても何にも出会うことはなかったくらいだ。
そんな森の中に何故二人がいるのか。
説明するには、時間を昨日まで遡らなくてはいけない。
† † †
「どうしよう……」
両手に地図を広げて、コウは頭上にいるフウに話しかける。
「次の町まで結構距離があるみたい。時間かかるけどいいかな?」
『俺はいいんだけど……コウはいいの?』
「何が?」
あくまでとぼけたような笑顔で聞き返すコウに、フウはたっぷりと時間を置いてから溜息を漏らした。
『俺は幽霊だから疲れ知らずだけど、コウは違うだろう』
そう、今のフウは幽霊である。
幼なじみであるコウにしか視えない・聞こえない・触れないと不思議な存在なのだ。
コウが笑顔のまま、びきっと音を立てて固まる。そのままフウが畳み掛けた。
『この地図だと、軽く三日は歩かないとダメだろ。途中で休めるような場所もないし』
ちらりと横目で見ると、コウは未だに固まっているままだ。昔から自分に分が悪くなると黙り込んでしまう。
今度は盛大に溜息をつくと、フウはとどめの一言を放った。
『コウにあんまり無茶してほしくないんだよ』
ここでようやく笑顔が崩れて、コウは情けなく眉を下げた。
「体力には自信はあるけど……三日となると話は別ね」
『キツイだろ?』
素直にコウはこくりと頷いた。
「どうしようかな」
二人であれこれと相談していると、後ろから誰かがコウの肩をポンと叩いた。
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