хⅣх~最後の夏は~

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「ねっ、ねぇ兄さん!あれっ!あれやりたいですっ!」 そう言って俺の左袖を引っ張る鬼姫。 「にぃにぃ……私……あ……れ」 そう言って俺の右袖を引っ張る鬼妃。 「兄ちゃん俺あの玉投げやりてー!」 そう言って前で俺のジンベイを引っ張る舞鬼。 「おいおい落ち着けって……」 さっきからずっとこんな感じ。 理由はわからなくもない。 なんせずっと《裏》で生きてきて、今日初めて《表》の祭に来たんだ。 目に映るもの全てが新しくみえて興味を引くものなのは仕方ない。 俺も《表》の生活を始めたばかりの時は、ゲーセンとかマンガとかにめっちゃハマったもん。 「兄ちゃんは一人しかいないんだから順番、って言いたいところだが、今日は珍しく"兄貴"も居るんだ。今日は兄貴を引っ張り回すこと!」 「おい鬼心テメェ……!」 そう、今日は兄貴がいる。 聞くと、家族全員で祭に行く為、昨日由鬼が説得したらしい。 よく兄貴が行く気になったなと、今でも不思議でしょうがない。 「うるさい兄貴。約束通り今日はそのムスッとした顔禁止な?あと殺気も。んじゃあまずは……鬼妃。兄貴とお前の行きたがってるわたがし屋に行ってこい」 そう言うと、鬼妃は無言で俺に訴える。 ――やだ。 「だ~め。せっかく由鬼が作ってくれた機会なんだからみんな仲良く!」 そう言って、俺は鬼妃の脇を掴んで兄貴に向かって投げた。  
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