9592人が本棚に入れています
本棚に追加
「お、おい!」
兄貴にしては珍しく、飛んで来た鬼妃を戸惑いながら受け止めた。
「金は持ってるよな?んじゃ二人で行ってきて。俺達その辺にいるからな」
まだ何か言いたげな兄貴を無視し、俺達は二人を置いて早足で離れた。
二人が人混みで見えなくなったところで、俺達は一旦止まる。
「んで次は舞鬼。お前は鬼羅と行きなさい」
「えーッ!?何で俺鬼羅となんだよ!兄ちゃんとがいいッ!」
「だーめ。お前は鬼羅に見させる。鬼羅も頼むな?」
「う、うん……?いや俺としてはきー姉さんの方が……」
「よろしくな?」
「……うん」
鬼羅は嫌そうに返事をすると、同じく嫌がっている舞鬼を引っ張ってどこかへ行ってしまった。
「それじゃあお兄様。私は一人で行きたいところがあるので」
「おう。また後でな」
そんなわけで、空気を読み由鬼は一人でどこかへ行ってしまう。
ナンパされることだけが心配だが、まぁ由鬼のことだから心配ないだろう。
「それじゃあ鬼姫。二人っきりのデートと行こうか」
左に立つ、化粧により絶世の美女と化した鬼姫に、俺はそう微笑みかける。
「あの……兄さん?」
対して鬼姫は少し浮かない顔。
「どうした?」
「あの……由鬼でなくてよかったんですか……?」
最初のコメントを投稿しよう!