хⅣх~最後の夏は~

37/53
前へ
/754ページ
次へ
「お、おい!」 兄貴にしては珍しく、飛んで来た鬼妃を戸惑いながら受け止めた。 「金は持ってるよな?んじゃ二人で行ってきて。俺達その辺にいるからな」 まだ何か言いたげな兄貴を無視し、俺達は二人を置いて早足で離れた。 二人が人混みで見えなくなったところで、俺達は一旦止まる。 「んで次は舞鬼。お前は鬼羅と行きなさい」 「えーッ!?何で俺鬼羅となんだよ!兄ちゃんとがいいッ!」 「だーめ。お前は鬼羅に見させる。鬼羅も頼むな?」 「う、うん……?いや俺としてはきー姉さんの方が……」 「よろしくな?」 「……うん」 鬼羅は嫌そうに返事をすると、同じく嫌がっている舞鬼を引っ張ってどこかへ行ってしまった。 「それじゃあお兄様。私は一人で行きたいところがあるので」 「おう。また後でな」 そんなわけで、空気を読み由鬼は一人でどこかへ行ってしまう。 ナンパされることだけが心配だが、まぁ由鬼のことだから心配ないだろう。 「それじゃあ鬼姫。二人っきりのデートと行こうか」 左に立つ、化粧により絶世の美女と化した鬼姫に、俺はそう微笑みかける。 「あの……兄さん?」 対して鬼姫は少し浮かない顔。 「どうした?」 「あの……由鬼でなくてよかったんですか……?」  
/754ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9592人が本棚に入れています
本棚に追加