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「ん~……俺とじゃ嫌だった?」
もしそうなら結構ショック。
「もちろん兄さんと二人きりというのは嬉しいです。ですが……私が言うのもなんですけど、こんな時くらい由鬼と一緒にいたらどうですか?」
「今日はどうした?兄ちゃんにベタベタだった鬼姫はどこ行ったんだよ」
「それは昔のことです。私はもう大人です。とにかく、兄さんもわかってるかとは思いますけど、あの子は禁欲し過ぎなんです。その原因が私と鬼妃にあるのはわかっています。だからせめて今日だけはあの子と一緒に――」
「バーカ」
俺はそう言って鬼姫の言葉を遮り、綺麗な黒に染まった鬼姫の髪をくしゃくしゃにしてやった。
「今は由鬼なんて関係ねーの。せっかく由鬼が作ってくれた機会なんだから楽しもうぜ?」
「で、でも……」
俺によって崩れた髪を直しながら鬼姫は言う。
「大丈夫。心配すんな。今日は一種の家族の交流会。花火が始まるまであと二時間以上あんだ。今日は《裏》を忘れて楽しもうぜ!」
俺はそう言って鬼姫の手を取り、先程鬼姫が興味を示していた金魚すくい屋へと走って行った。
ったく、言われなくてもわかってるっつーの。
誰よりもアイツを理解してんのはこの兄である俺なんだからよ……
◇
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