хⅣх~最後の夏は~

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鬼姫と金魚すくいをして色々回った後、次は舞鬼、その次は鬼妃と、そんな感じで俺は屋台という屋台を全て回った気がした。 そして俺は今は、由鬼といる。 「…………」 だけど、無言。 さっきからずっと。 ただ無言で、ただ賑わう屋台の前を、ただ二人で歩いている。 「お前は……何かしたいものはないのか?」 「いえ、ありません」 こっちを向かず、ただ前を向いて由鬼は言う。 由鬼の素っ気ない態度に、俺も黙ってしまう。 それからの会話はまたプツンと途絶えた。 たださっきと同じように、無言で、屋台の前を歩く。 それから十分くらいが経った頃だろうか。 突如その十分間の沈黙を破り、由鬼が口を開いた。 「いざこういうことになりますと……一体何をすればいいかわからなくなるものですね」 落ち着いた声色で、由鬼は言う。 「実は私、今日お兄様と二人っきりになることを楽しみにしていたんです」 自嘲でもしているかのような由鬼の表情。 こちらには顔を向けず、ただ呟く。 「金魚すくいとかわたあめとか射的とか……したいことたくさんあったんです。けど……いざこうなると、出来ないものです。私、緊張でもしてるのでしょうか?何だかお兄様を見ると、胸が締め付けられて口が動かなくなってしまうんです」  
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