хⅣх~最後の夏は~

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神社の本殿へ行くには山の側面にそって造られた長い階段を登らなければならない。 長いと言っても、大人なら十五分くらいあれば充分登りきれるくらいだ。 そんな神社の前の階段の前に、一人で佇(タタズ)む水色の和服を着た女性がいた。 一見すれば精工に造られた美しい人形。 祭の中心から外れ、あまり光の当たらないその場所でも、その女性がいる所だけが明るく輝いているように見える。 そんな女性が目に入った瞬間、あまりにも美しさに俺は呼吸をするのを忘れ、その場で立ち止まってしまった。 「何してんのよ?早く来なさい」 二度目だった。 俺が女性を魅入り、何も動けずこうなってしまったことが。 一人目は――イヴ。 二人目は―― 「ごめん、今行く」 充分に見慣れていたはずの――鳳月だった。 「ったく遅いわよ!アンタが来るまでに何人の男に言い寄られたと思ってんのよ?たまたま変なことされなかったからよかったけど、何かあったらどうするつもりよ!」 「……凄く似合ってる。とても綺麗だ」 「…………っ!!あ、あのねぇ!私の話聞いてた?私はそういうこと聞いてんじゃないのよ!」 「その浴衣は魎恋に買って貰ったのか?凄く似合ってる」 「だから~……!!ふんっ……もういいわよっ!」 鳳月が顔を赤らめてそう言うと、プイッと顔を逸らして一人で階段を登り始めてしまった。  
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