хⅣх~最後の夏は~

44/53
前へ
/754ページ
次へ
「それ……本当なの?」 「マジマジ」 「もはや犯罪の領域ね……」 存在自体が法外だからな。 「でも上手かっただろ?流石は年上の女って感じで」 「まぁ……上手いのは認めるわよ」 鳳月はそう言うと、袖から携帯を取り出し、時間を確認して袖にしまった。 ――忘れてた。 そういえばそろそろ花火が上がるんだったな。 「なぁ鳳月」 「何よ?」 「三秒くらい目、つぶってくんない?」 「何でよ?」 「お前を愛してるから」 「気持ちわ――」 鳳月の言葉を遮り、俺は素早く鳳月を俺の胸に抱き寄せ視界を閉ざし、それと同時に俺の真後ろに歪みを出現させ、俺は鳳月を抱き寄せたまま倒れるように歪みの中へ入っていった。 「きゃっ!?」 現れた先は俺の秘密の穴場。 俺は鳳月を抱えたまま視界の開けた山の側面の草の上に、背中から倒れ込んだ。 突然のことに、鳳月は可愛らしく声を上げる。 「と~ちゃ~く。ちなみに移動手段は企業秘密だから聞くなよ?」 俺はそう言い、抱き寄せていた鳳月を離してやる。 俺から離れた鳳月は一瞬戸惑っているようにも見えたが、すぐに諦めたように俺の横へ仰向けに寝転がった。  
/754ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9592人が本棚に入れています
本棚に追加