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「ここ、俺だけしか知らない秘密の花火スポットなんだ」
「…………」
そう言ったが、鳳月から返事はない。
さっきまでの柔らかい表情とは違い、何か思い詰めた表情で、ただ屋台などの光りで少し明るんだ空を仰いでる。
「アンタ、さ……」
空に顔を向けたまま、静かに鳳月は口を開いた。
「また私の為に、傷付いてるんでしょ……?」
そう言い、鳳月は俺の方へ顔を向ける。
「今日聞いたのよ……そのイリアって人から。アンタ……私の為に戦って、死にそうになったんですって?」
イリアめ……余計なことを。
「私言われちゃった……『鬼心は命を失いかけてまで貴女を護っているというのに、対して貴女は呑気なものですね』って……。魎恋さんに聞いたらね、『それは私がお答えしてよいことではありません』だって……」
そう言う鳳月の表情は、言葉を発するごとに、だんだんと暗くなっていく。
「私ね、知っていたわよ?アンタが私の為に体を傷だらけにしてるってこと。だってアンタ……いなくなって帰ってくる度に私に笑顔を向けてくるんだもん」
暗くなった顔の瞳に、次第に涙が溜まっていく。
「私わかってるんだから……アンタが私に向ける笑顔が、私を心配させない為の笑顔だって……!」
「鳳月……」
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