хⅣх~最後の夏は~

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「吸血鬼は基本的には不死だ。不死であり――不死身。その恋人も当然の如く吸血鬼で、俺はその人に吸血鬼にされた。まぁ自分からなったっつー方が正しいっちゃあ正しいんだが……」 そっか……コイツは最初っから――生まれた時から吸血鬼だったわけじゃないのよね。 「いくら不死で不死身な吸血鬼とは言えど、死ぬ時はしぬ。それは大きく分けて二つ。銀や聖水やなんかで心臓を破壊させるか――"他の吸血鬼に吸血行為をされる"か、だ」 これも、聞いた。 「今言った後者の方は、俺ら吸血鬼の中では禁忌とされてんだ。共食い、同族殺しは人間だって禁忌だろ?それと同じこと。しかも吸血鬼の間では、その方法で殺されることを、『最大の恥』。殺すことを『最大の悪』。わかりやすく言うと、その方法で殺すことは、その殺した相手を最大級に馬鹿にしていることで、それと同時にその方法で殺した奴は、死ねばいいってことなんだよ」 どうして今そんなことの説明を……? 「まぁ…………俺はその"最悪の方法で――恋人を殺した"んだよな」 一瞬、心臓が止まってしまった。 「このベンチでこうして座って、俺はゆっくりとあの人の首筋に………長く鋭い犬歯を突き刺して……血を吸って……最悪な方法で……殺した」  
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