хⅣх~最後の夏は~

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今なんて言った……コイツ? 『愛する』っていう感情が……ないですって? ありえないわよ、そんなこと。 だってコイツは鬼妃さんとか鬼姫さんとかを―― 「意外と簡単なもんなんだ、性格を作るって。昔の記憶を元に、それと年齢を考慮して作ればいいんだからな。実は俺が《表》で生活してたのも、人間の性格とかを観察する為でもあったんだ」 なんで…… 「もちろん、兄貴や鬼妃、鬼姫、鬼羅、舞鬼、由鬼、魅鈴、魎恋、虹なんかは大好きだぜ?形はどうあれ、みんな俺を愛してくれているからな」 なんでよ……! 「……これを聞いてお前はどう思った?俺に対して、『騙された』とか『最低』とか『可哀相』だとか思ったと思う」 違う……! 私はそんなことより……! 「別にそう思ってもらっても構わない。それくらいのことはしていたと思うし、黙っていたことも悪かったと思う」 黙っていられたことが……嫌だったのよ! 「だけどさ……こんな最低な俺でもさ――見付けたんだ、"愛する人"」 コイツはそう言うと、哀愁のようなものを感じさせるような、柔らかい笑顔を私に向け、こう囁くように言った。 「俺……お前のことが大好きだ。愛してる――そう気付いたんだ」 心臓が……止まったかと思った。  
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