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「え……?これは……」
あの時の……!
「驚いたか?実は俺は金髪なんだ」
「そんなことより、アンタまさか――」
「鳳月。残念ながら、お前の願いは聞けない。――戦いは俺の生き甲斐だ。それに言ったろ?お前は俺の生きる糧、エネルギーだって。エネルギーがいなくなったら、俺は生きられない。俺が生きる為にも、お前を絶対に護らなきゃいけないんだ。それだけは……わかって欲しい」
「嫌よ」
「はは……まいったな。頑固だなぁお前。まっ、頑固さなら俺だって負けねぇけどな」
コイツはそう言うと、真横に夜よりも黒い、丸い歪みみたいなものを出した。
「実は俺、今から仕事なんだよね。スッゴいデッカイ仕事」
ほんっとバカじゃないの?
「…………一応言っとくけど忘れんじゃないわよ?――"アンタ死んだら私も死ぬから"」
「こりゃあまいったな……。ますます死ねなくなったじゃねぇか」
ざまーみろ、バカ。
「ま、元より死ぬつもりなんてサラサラねーんだけどな」
コイツはそう言うと、一歩前に出て、私に視線を合わせるように腰を曲げた。
「二ヶ月くらい、お前の下には帰れない。我慢してくれるか?」
「そんなこと聞くくらいなら早く帰って来なさいよ」
そう言うと、コイツは引き攣るように微笑し、私の頭をゆっくりと撫でて、ゆっくりと立ち上がった。
「んじゃ、行ってくる」
そしてコイツそれだけ言って、私の前から消えた。
黒い歪みを残して。
「このバカ…………女の子をこんなとこで一人にすんじゃないわよ」
そして、私は静かに涙を流した。
込み上げる想いを涙に変え、ぽろぽろと。
私の頭の中を埋め尽くすあのバカを想いながら……ぽろぽろと。
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