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――大通りでも住宅街寄りに位置する、ミラリア探偵事務所。
事務所としては小さめなそこには"片腕の探偵"として、業界ではちょっと名の知れた探偵がいた。
「…うーん」
壁一面を本棚に埋め尽くされた中、窓際に事務机が一つ、部屋の真ん中に大きめな机が一つ。
あとは真ん中の机を挟んで向かい合うように置いてある、革のソファ。
その革のソファに寝転んで雑誌についてるクロスワードをしてる青年、彼が"片腕の探偵"―レノン・ミラリアである。
「どこで間違えたかなあ…」
別に、正解した人が応募するともらえるプレゼントが欲しいわけではないのだが、暇つぶしとしてやっていたら、それが案外難しくて、躍起になってやっているのであった。
「わっかんないなあー」
――ジリリリリリリ!!!
「うわっ!」
突然鳴り響いた電話、レノンはそれに飛び上がる。
「はいはいっ今でます!」
わたわたと、さっきまで頭を悩ませていたクロスワードと鉛筆を机に置き、電話をとるべく左腕を伸ばす。
「はい、ミラリア探偵事務所です」
『ええと、"片腕の探偵"さんですか?』
「はい、そうです」
頷くレノンの受話器を持つ左手とは逆の、本来右腕があるべき所はなにもなく、袖が頼りなく垂れていた。
『あぁ、よかった。依頼をしたいんですけど…』
「どういったご用件で?」
『電話じゃあ話せないんですが、屋敷に来ては貰えないでしょうか?』
「いいですよ。いつ頃向かえばよろしいですか?」
『明日の正午にでも…』
「はい、わかりました。あ、場所と名前は?」
『カムイ・オルザルトと言います。車を向かわせますので、それに乗ってきてくだされば』
「ありがとうございます。では、明日の正午でよろしいですね?」
『はい、よろしくお願いします』
――ブツッ
「さあて、明日の依頼に向けて休んどこうかなっ」
レノンは左手で机の上に置いておいたクロスワードを本棚に、鉛筆をペン立てに片付け、寝室へと向かった。
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