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食事が運ばれてくるのは昼と決まっているのに、人が来るとは。
腹の減り具合から考えても、まだ昼までは時間があるはずだ。
何事かと内心首を傾げる少女の前で、鍵を開ける音がして固く閉ざされていた鉄製の扉が耳障りな音をたてて開く。
開いた扉から差し込む光に目を細めながら見たのは、実に二年ぶりに見る人の姿だった。
「出ろ、アディル・サグラート」
事務的に看守は言う。
だが次に少女=アディルは、耳を疑う言葉を聞いた。
「釈放だ」
「……は?」
間抜けにも―――アディルはそう答えることしか出来なかった。
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