プロローグ

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「敬っ、敬っ!」  朝から慌ただしい会長兼幼なじみの福河梓(ふくかわあずさ)の騒々しいことに副会長、佳山敬(かやまけい)は眉を潜めた。  彼をそうさせたのはそれが朝であること、そして読書の邪魔になったからである。 「何ですか……?」  春休みが始まってからも相変わらず四人で居た。  美羽は今日はちょっと出掛けると言って外出中だ。  俊宏は帰宅が朝方だったので今はソファーでうずくまってすやすやと寝息を立てている。 「すげぇぞっ!」 「……主語をくれますか?」  親友だからと言ってテレパシーで会話は出来ない。  敬が梓に指摘すると彼は呼吸を一つ置いた。  小学生のようにハイテンションな梓は声にその感情を乗せる。  敬には梓が一体何をいいたいのか、この時点では皆目見当が付いていなかった。 「今年の入試の結果をやっとオヤジが見えせくれたんだ。んで、とりあえず、倍率は30倍なんだけど、見てみろよ、こいつっ!」  梓は手に持っていた封筒を敬に渡して中身を確認させた。
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