迷子の子猫ちゃん

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「っ―――遅い!」  梓がイライラしているので周りには美羽と敬と俊宏以外の人間は寄り付かなかった。  もちろん、教員もである。  新入生を威嚇するな―――事前にそのような校則を作るべきだったと敬は一人思う。  ワインレッドに落ち着いた髪を揺らして、つり上がった眼力が半端ない瞳で高台から下級生を見下ろす生徒会長など全国を探しても彼しか居ないだろう。  横に金髪の書記が居るのも何とも異様な光景だった。  真面目に制服を着こなす上級生が自分しかおらず、南陽の未来は暗黒時代に突入する予感だ。  フリーダムなの良いところであり、また悪いところである。  一人もやもやとそんな下らないことを考えている敬は天気の良さに感服していた。  いつもよりポカポカとしていて眠たくなる。 「梓、私はちょっと散歩に行ってきますね」 「……は?」 「新入生代表ならその内来ますって。此処に三人とも居ても仕方ないですしね。いざという時はそこら辺の新入生に文を読ませなさい。誰が読んだって価値は変わりませんよ」  梓は無言で腕組みをして諦めたようにため息を吐いた。
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