春は来ぬ

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サクラの花が、咲いている。 わたしは、黙ってそれを見上げた。 こんなにも淡く咲いているのに、サクラの花は枯れるより早く散って行くのだ。 わたしが卒業式にもらった花は、もう枯れてしまった。 花びらの先から、少しづつ茶色くなって弱弱しく枯れて行った。 大切にしていたのに。 やっぱり、枯れてしまった。 それは、わたしの想いと同じだった。 わたしは、サクラになれなかったのだと思う。 潔く、この想いを散らすことができなかったのだから。 ずっと大事にして、大切に守っているつもりで、結局は枯らしてしまったのだ。 あんなにも、綺麗だったのに。 あんなにも、純粋だったのに。 わたしはその想いを、自分の心の奥にひっそりと隠しているだけだった。 だから。 サクラの花が、こんなにも美しく咲いているから。 わたしは、自分の弱さを認めなければいけないのだと、思う。 黙って見上げているサクラの、淡い強さを前にして。 告げられなかった恋心が、美しいはずもないのだと。   おわり
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