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「…っくしゅ。」
哲の表情を読み取ろうとしたが、私は自身のくしゃみによって阻止された。いけない、話が過ぎたか?少し、体が冷えてきた。そう思って自分の腕を抱く私に、いきなり黒い何かが投げ付けられた。
…これは、学ラン?
ハッとして顔を上げるが、その持ち主は早々に姿を消していた。私に学ランを投げつけ慌ててその場を去る様子を思い浮かべると、自然と口元が緩くなってしまう。
…少しくらい、自惚れてもいいだろう?
優しすぎる、お前が悪いんだからな。
まだ哲の体温が残る学生服を肩にかけながら、私はしばらく、その温かさに浸っていた。
お前は知らないだろう?
いつもの歌に隠された、
こんなにも狂おしく愛おしい、私の気持ちを……。
END
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