最初から迷ってない。

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「――母さん」 声が聴こえる。 「――母さん」 懐かしいような――そうでないような。 「――母さん」 フェイト――? 「――母さんっ!」 違う。フェイトはそんな風に私を呼ばなかった。 「――――アリ、シア・・・・・・?」 「母さん・・・・・・よかったぁ。死んじゃうのかと思って、心配したんだよっ!」 フェイトや、あの亡霊と同じ顔で安堵の笑みを浮かべる――アリシア。 「アリシア!」 「わわっ!? か、母さん、痛いよ・・・・・・」 ああ、アリシア、アリシア! 「本当にアリシアなのね・・・・・・」 「母さんが酷いことしてたフェイトでも、母さんが物凄く酷いことしたタクミでもない。私は私、アリシア・テスタロッサだよ」 ・・・・・・。 「母さん。私は物凄く怒っています」 「・・・・・・アリシア、あのね、私は――」 「私の妹に酷いことした」 ・・・・・・。 「ま、待ってちょうだい、アリシア――」 「私の弟にもっと酷いことした」 ・・・・・・間違いなく、アリシアだと確信したわ。 私をこうも簡単に振り回せるのは、アリシアしかいない。 「――親子の感動の対面に水をさすようですまないが」 気に障る声が聴こえた。 「――どうして、あなたが此処にいるのかしら?」 アリシアの前に立ち、目の前の男を睨みつける。 どういうこと? 此処はアルハザードではないの? 「そう殺気立たないでくれ。ほら、同じ紫色同士」 「あなたと一緒にされるぐらいならすぐにやめるわ」 イラッとした。 「まあ落ち着きたまえ、プレシア。私は君と敵対するつもりはない、平和的に解決しようじゃないか」 「あなたが平和だなんて口にすると、寒気がするわ」 「・・・・・・君の私に対する評価がよくわかったよ。まったく、私ももう少し人当たりをよくするべきだ」 ちぐはぐなことを言う目の前の変態博士を、焼き払いたいと思う私は、間違ってないわよね? 「母さんなんて嫌い」 ・・・・・・その前にアリシアの機嫌をとらないと。 ああ、これが反抗期・・・・・・。
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