それから。

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母さんの言うことに従って、色々な人に迷惑を掛けて。 最後に残ったものは、言いようのない喪失感だけ。 母さんに、兄さんに、優しさに、まるで子犬のように縋っていただけ。 出来損ないのお人形。 言われたことをただこなしていた。 失ったものは大きいけれど。 得たものも大きい。 瞳を閉じれば感じる、胸の内に在るあたたかな光。 撫でてくれた手の温もり。 抱いてくれた肩の感触。 絶対に忘れない。 大好きです、兄さん。 ◇ 身体を拘束されたまま部屋に入れられ、どれだけの時間が経ったのかわからない。 多分、まだ数日。 母さんのことは聞いた。 兄さんのことも聞いた。 「――フェイト・テスタロッサ、入るぞ」 ビクッと肩が震えた。 落ち着け、と自分に言い聞かせる。 「身体は大丈夫か――?」 「な、ななななっ、なんでっ、なんですっ、か?」 普段通りに振る舞えただろうか。 「落ち着け、挙動がおかしすぎるぞ」 振る舞えなかった。 「まったく、君たち兄妹は・・・・・・」 耐えられない、とでも言うように笑い出す執務官――クロノ。 怒ってはいないみたいだけど・・・・・・。
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