それから。

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そして漸く、タクミと二人きりになれた。 医務室の奥。カーテンを開けると、そこにはアリシアが入っていたものと同じような筒――培養槽とも呼べるものに浮かぶ、タクミの姿。 「君は人気者だね」 ――初めは嫌いだった。 私の居場所を奪われてしまいそうで。 次に怖くなった。 子供とは思えない行動・思考。自分の身の危機すら感じた。 次は羨望。 何も考えていないような、自由な態度に。 その次に嫉妬。 私は君にビクビクしながら生きてるのに、そんなの知らない君に。 羨望が嫉妬に、そしてその嫉妬が、いつしかさらに形を変えた――。 そこで、私はとんでもない間違いを犯した。 あろうことか、あろうことか―― 「――ボク、か・・・・・・はぁ」 自分の身を守る為。 取った手段がそれ。 その勘違いが、タクミの中で今日まで続いている。 そのおかげ、と言うべきか。 タクミが遊びに行く時は、私が一番に出てきて、タクミが相談をするのは、いつも私だ。 親友故の距離感のなさ。 それは心地いい。 でも、私が求めているのはそういうのではないのだ。 距離感のなさから、不意に抱きついてくるタクミ。 その度に死にそうになるくらい顔が赤くなって、心臓が早鐘を打つ。 ・・・・・・いい加減、気づいてもいいじゃないか。 なのはも、フェイトも、アルフも、クロノも、みんな、一発でわかった。 なのに、なんで・・・・・・。 でも、自分から正体を明かすのは、私に魅力がないと認めてしまうようだから。 ――私は君が気づくまでボクで、ボクはボクのまま、君のそばにいるよ。 「早く起きなよ、女の子の成長は早いんだから。君が起きる頃には、隠しきれないくらいに成長してるかもよ?」 どこが、とは言わない。 妹の為にすごく頑張ったのはわかる。 でも、もう少しだけ、ボクにも気を使ってほしいものだ。 「――もうちょっとだけ、ボクの相棒でいてね」 ガラス越し、背伸びをしてタクミに口付けた。
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