ワイドショーの取材

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ワイドショーの取材

「きみ、さつきちゃんだよね!?」 放課後さつきが校門を出ると、マイクを構えた軽薄そうな若い女性と、カメラなどの撮影機材を抱えた数人の男達に囲まれた。 「わー、あれからまだ2ヶ月しか経ってないのに、もう通学してるんだ!」 さつきの小さな肩がビクッと震えた。 「やっぱり亡くなったお友達がみんな、唯一生き残ったさつきちゃんに味方してるんだね!どう?あの不幸な転落事故から2ヶ月経ったわけだけど、今の心境を聞かせて貰えるかな?」 いつも俯きがちな少女の顔が、完全に下を向いた。 「楽しいはずの遠足旅行、それを襲った悲劇!なんと〇〇小学校4年1組の 子供達を乗せたバスが崖下に転落、その惨劇で唯一生き残ったのが、ご存知このさつきちゃんなのです!」 黙りこくってしまったさつきを前に、女性レポーターが解説を入れて間を持たす。 「さつきちゃんはなんとご両親も交通事故で失っており、その時もさつきちゃんだけが奇跡的に助かっているのです!」 個人情報保護法などてんで無視したレポートを、ダラダラとカメラの前でたれ流す。 「んー、さつきちゃん、何かコメント貰えないかな?おじさん達も仕事で来てるから、忙しいんだ。4年生にもなればわかるよね?」 プロデューサらしき男が、貝になってしまった少女に脅しともとれるような口調で話しかける。 「さつきちゃん、まだ難しくてよく解らないだろうけど、あなたの命は運転手の過密スケジュールを改めさせるために残されたと思うの」 さすがにまずいと思ったのか、女性レポーターが割って入る。 「あなたはたった一人の生き残りなんだから、皆の命を無駄にしないためにもコメントする義務があるわ」 レポーターの一方的で無神経な言葉が少女の心を傷つけ、無惨に踏みにじる。 「カメラ!OK?回ってる?…どうやらお友達のことを思い出してしまったようです」 少女の小さな身体が細かく震え、アスファルトに小さな水滴を垂らすと、それを収めるべくカメラが廻りだす。
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