都会のラクダ

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やぁやぁ、そこのラクダよ。 いきなり声を掛けられた。 振り返れば真っ白なヒゲを生やした人間がいた。 長い睫毛をパチクリさせる。 わしもほら、歳をとるにつれ腰が曲がってしもうて。 コブみたいじゃろって真っ白なヒゲを触りながら雑種犬みたいに優しく笑った。 初めてまともに人間と会話してテンションが上がった僕は、今までの愚痴やラクダのコブの真相とか 渋谷の裏路地の汚さへの嘆きとか、でも早朝のスクランブル交差点は人が居なくて別世界みたいだ、とか喋りまくった。 歳を取れば皆一緒。言わばわしらは同胞じゃなあ。 予想外の言葉に、コブの辺りがほんのり暖かくなる。
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