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食事の支度をする私のスカートを、娘のサクラが引っ張った。
『どうしたの?』
包丁を置いて、手話で伝える。
「パパが帰ってきたよ」
サクラはまだ3歳になったばかりだが、手話は完璧に覚えていて、手話で私にそう教えてくれた。
幸福なことにサクラの耳は正常で、言葉も話せるが、私の為に覚えてくれたのだ。
大抵の会話は口の動きでも分かるが、覚えて損はないと主人が強く薦め、話せるようになったのと同時に手話も教えてきた。
私はしゃがみ、サクラと視線を合わせて頭を撫でた。
『教えてくれてありがとう』
言葉は発せれないが、口と手の動きで褒める私に、サクラは万遍の笑みを向けた。
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