23人が本棚に入れています
本棚に追加
「菜々子、サクラただいま」
主人の雅樹から革の鞄を受け取る。
私に鞄を手渡すと雅樹はサクラを抱き上げて頬にキスをする。
『私にはないの?』
「ハハッ。ママもキスして欲しいんだって。サクラもしてあげな」
「はーい!」
二人から両頬にキスを受けて、自然と笑顔になる。
こんな時、強く思う。
耳が聴こえなくても、私は充分に幸せだと。
三人で食卓を囲み、その後、雅樹がサクラをお風呂に入れてからサクラを寝かしつけた後、夫婦で酌を交わす。
ほんのり顔に熱を持ち始めた頃、私は立ち上がった。
「どうしたんだ?」
『サクラが泣いてるみたい。見てくるわ』
ニ階にある寝室に向かい部屋を覗くと、案の定サクラは起き上がって泣いていた。
『怖い夢でも見たの?』
私の問いに頷くサクラを抱いて、再び眠りに就くまで添い寝をした。
.
最初のコメントを投稿しよう!