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「なぁ、燕(つばめ)は『通称神様』って噂は知ってるか?」
噂自体に関心が無いのか、彼の話題そのものに関心が無いのか分からないが、燕と呼ばれた少女はその言葉に然程関心を持たない顔で反応する。
「聞いたことないけど聞くのやめとく。余り良い噂じゃないとみるよ」
「なんでだよ? 今度は凄い話だぞ!社会問題になってる程の大きな噂だ!」
大きく広げて話の規模を体で表現しようと試みる少年。残念だが少しも規模の凄さが伝わらない。
「だって、この間聞いた話は連続切裂き魔の話だったり、幻の自殺サイトの話だったりとかあんまり良い話じゃないんだもん。聞いてて嫌な気持ちになるよ」
力なく吐かれた溜息は見事彼女の心境を具現化したものだと思える。今まで暗い話だったから今回も暗い話に違いない。そういった先入観が既に出来上がってしまっている為、今一つ乗り気になれないのだろう。
「あー、そりゃ悪い。でも、今度はそんな暗い話じゃないぞ。明るくて楽しくて聞いてると盛り上がる様な話だ!」
「わ、分かったよ。聞くよ、聞けばいいんだよね?」
視線を合わせない謝罪と拳作りながら熱弁する彼に納得出来ずにいたが、彼の勢いに押され、断り難くなった燕は愛想笑いを作りながら渋々承諾した。
「えー、では」
ゴホンと咳払いをする。
「通称神様。それは人々の願いを何でも叶える存在だ!」
「あれ? 前、似たような話を話さなかったけ? 確か望みをかなえるとか何とか」
「それは死神様の話だ! 趣向も内容も大きく違う!」
「ご、ごめん」
少し突っ込んだけで鬼が出てくるものだから、燕はただ虚しく謝るしかなかった。彼に対する噂の悪口らしき話題は禁句らしい。また文句言われたくないしと「続けていいよ」と言う台詞を残し、彼女は御口チャックで聞き役に徹底した。
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