第一章

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 「その雰囲気だと本当に耳にはさんだ事が無いみたいだが、今この町はその噂で持ちきりなんだ。会えばどんな願いも叶えてくれるがキャッチフレーズの通称神様。人間誰しも信憑性が薄いにしても少なからず好奇心や関心が生まれるだろ? でも、大体そういう噂はブーム見たいに一時的に盛り上がって後に都市伝説程度の扱いで後々ひっそり語り継がれるのが妥当だ」  そんなものかなぁ。と思っても口にはしない。  「例えば口裂き女って知ってるか? 知ってるよな? これは有名過ぎて気持ち悪いぐらいだからな!」  知らないよ。と思っても口にはしない。  「この話は今じゃ都市伝説扱いだが、この噂が流れた当時は社会問題になるぐらい爆発性を見せていたんだ。子供ばかり狙うと言う事でPTAが本格的に動き出したとか様々な問題を起こした。でも、それほど大きな噂は暫くしたら凋んでしまった。勢いに乗れば学校閉鎖にでもなっただろう口裂き女事件は沈静したんだ。そしてそれは何故か? 何故だと思う?」  分からないよ。とは口には言えず、ましてや無言で通してはよろしくない状況だ。正直彼の話の殆どは聞いていないのでどう答えていいのか分からずにいた。話して怒られるか、黙って怒られるかと言う謎の葛藤に見舞われる中、取り敢えず一つの決断をした。  「わ、分かんないや。何でなの?」  「はー! 駄目だ! おまえは本当に駄目だ! 自動販売機に収納されてる缶ジュースのプルトップが最初から外されてる缶ジュース並みに駄目な奴だ!」  非難を食らうのを承知で返した言葉だが、予想の斜め上辺りの罵倒が飛んできたもんだから非常に反応し辛い。「ゴメン」の言葉を何度も繰り返して、彼の燃え上がる心情を静めるので精一杯だった。何度もぺこぺこ謝る燕に誠意が感じないのか、煮え切らない表情だ。挙句、辺りをキョロキョロ見廻して一人の女子に声を掛ける。
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